子どものかかとが痛い(シーバー病)——休むことは医者に聞いたのに、インソールは口コミで決めていました
息子が小4のころ、「かかとが痛い」と言い出しました。一度ではありません。しばらくすると引いて、また痛くなる。その繰り返しでした。
病院で診てもらい、練習を2週間ほど休みました。期間は医師の推奨です。何が起きたら再開してよいかも、そのとき聞いています。受診先は、スポーツのケガを専門に診る整形外科——スポーツ整形——を私が選びました。休ませ方の判断が違うと思ったからです。
練習を再開したあと、私はもうひとつ、自分の判断で足したものがあります。市販のインソール(靴の中敷き)です。また痛くならないように、という予防のつもりでした。どれにするかは、ネットの評判を調べ、すでに使っている周りの保護者に聞いて決めました。
ここまで、ごく普通の対応に見えると思います。私もそう思っていました。ところが、あとから論文を調べて最初に気づいたのは、研究の中身ではなく、自分のことでした。休むことは医者に聞いたのに、入れるものは口コミで決めていました。休み方は専門家に確かめて決めたのに、インソールは評判で決めていた。同じケガの話なのに、決め方がまるで違っていたのです。
論文から分かったことは、3つあります。①装具や運動を足しても足さなくても、3か月後の結果は変わらなかったこと。②市販のインソールを調べた研究は、そもそも無かったこと。③同じ「かかとが痛い」でも、別のケガのことがあること。順番に説明します。
8歳から15歳の101人を、①痛む活動をやめて様子を見る ②装具を入れる ③運動療法 の3つに分けて比べた無作為化比較試験(オランダ)
Wiegerinck JI, et al. Treatment of calcaneal apophysitis: wait and see versus orthotic device versus physical therapy: a pragmatic therapeutic randomized clinical trial. Journal of Pediatric Orthopaedics. 2016;36(2):152-157.[1]
分かったこと① 装具や運動を足しても、3か月後の結果は変わりませんでした
軸にした試験の中身を、順を追って書きます。対象は、シーバー病(踵骨骨端症)と診断された、8歳から15歳の101人です。この101人を、3つのグループに分けました。①「痛む活動をやめて、痛みが引いたら再開する」とだけ言われて、あとは様子を見るグループ。②かかとを少し持ち上げる装具を靴に入れるグループ。③専門家の指導で運動をするグループです。どの子がどのグループに入るかは、偶然に任せて決めます(これを無作為化といいます)。グループどうしの顔ぶれをそろえて、やり方の違いだけを比べるためです[1]。
結果はこうでした。どのグループも、痛みは良くなりました。そして3か月後の時点では、装具のグループも、運動のグループも、様子を見ただけのグループと差がありませんでした[1]。何かを足しても足さなくても、3か月後は変わらなかった、ということです。
ここで、立ち止まってほしいところがあります。差が無いなら、休まずに練習を続けたほうが、うまくなるぶん得ではないか——そう考えたくなります。私も親なので、その計算はよく分かります。でも、この試験からその結論は出せません。この試験には、「痛いまま練習を続けるグループ」が無いからです。いちばん軽い対応のグループでさえ、「痛む活動はやめる」と言われています。比べられたのは、あくまで「やめたうえで、何を足すか」です。痛いまま続けたら何が起きるかは、この試験では調べられていません。逆に、「休むのが正解だと証明された」とも言えません。休んだ子と休まなかった子を比べた試験そのものが、見つかっていないのです。
では、いつまでやめて、何が起きたら戻すのか。家庭がいちばん知りたいその判断は、この試験の外側にあります。うちの場合、そこは目の前の医師が決めてくれました。だからこそ、あとで書く「家庭でできること」の1つめは、そこを聞くことにしています。
なお、2026年に出た国際的なまとめ(コクラン・レビュー)も、「足すもの」の側について同じ方向のことを言っています[2]。装具も、テープも、運動も、薬も、「これが効く」と言い切れる根拠はまだ無い。そして、この痛みは時間とともに自然に良くなることが多い[2]。
分かったこと② 市販のインソールを調べた研究は、ありませんでした
私が入れたのは、市販のインソールです。そこで、市販のインソールの研究を探しました。無いのです。
「私が見つけられなかった」という話ではありません。この分野の研究を、決まった手順で集めて調べた論文(系統的レビューと呼ばれるまとめです)が、はっきりこう書いています。「このレビューで見つかった研究の中に、既製の——つまり市販の——装具を調べたものは無かった」[3]。9つのデータベースを2012年5月までさかのぼって探しても、市販品を調べた研究は1本も無かった、ということです。
しかも、見つかる研究はどれも「すでに痛い子の治療」の研究です。うちのように「また痛くならないための予防」に使えるかを調べた研究は、それ自体がありませんでした。
念のため書きます。これは「インソールは効かない」という意味ではありません。調べられていない、という意味です。私は、効かないと分かっているものを買ったのではありません。効くかどうかを誰も調べていないものを、調べずに買ったのです。
分かったこと③ 同じ「かかとが痛い」でも、別のケガのことがあります
うちは、かかとを痛がった時期が2回ありました。診断は、2回とも違いました。一度めはシーバー病(踵骨骨端症)。別の時期の二度めは、かかとの疲労骨折でした。親の耳には同じ「かかとが痛い」でも、かかとの中で起きていたことは、別だったのです。
疲労骨折は、時間のかかり方も別です。子どもの下肢の疲労骨折を集めたアメリカの記録では、活動に戻るまで平均11週ほどかかっています(18歳未満の97人)[4]。うちの「2週間」とは、まるで別の時間の話です。「また、あれだろう」と親が引き受けてよい話ではありませんでした。
私は、なぜ確かめなかったのか
休むことはあれだけ確かめたのに、インソールはなぜ確かめなかったのか。思い当たる理由は2つあります。どちらもあったと思います。
1つは、失うものが小さかったからです。インソールは、合わなければやめればいい。値段も、練習を休ませる判断に比べればずっと軽い。「試して損はない」と思えるものの前では、確かめる手が止まりません。
もう1つは、困っている最中だったからです。子どもが実際に痛がっている。親として、何かしてやりたい。その「何か」を探しているときの私は、ふだんの買い物のときの私より、確かめることに時間を使いませんでした。
ただし、これは誰かに売りつけられた話ではありません。広告にだまされたのでもありません。自分で調べて、自分で選んで、自分で買いました。それでも、確かめるという工程だけが、そっくり抜けていたのです。
この記事で言えないこと
- うちの子1人の話です。お子さんに当てはまるかどうかは、この記事では分かりません
- 「2週間」は、うちの子の、そのときの話です。同じ診断でも、競技に戻るまでの日数は人によってまるで違います。平均が約60日だったという記録もあります(ドイツの育成組織・22人)[5]。12か月以上続くことも多い、というまとめもあります[2]
- 「休ませ方の判断が違うと思った」は、私の見立てです。確かめていません。診療科や医療機関の優劣の話ではありません
- このまま再発しなかったとしても、それがインソールのおかげかどうかは、分けられません。同じ時期に、背も伸びるし、練習量も季節も変わるからです。治したものが何なのかは、分かりません
- 「よくある」と「軽い」は別です。同じ子に、疲労骨折も起きています
家庭でできること
この一件から持ち帰ってほしいことを、3つにまとめます。
- 「休みなさい」と言われたら、期間と、何が起きたら再開できるかまで聞いてください。「休んでください」で会話が終わると、いちばん難しい「いつ戻すか」の判断が家庭に持ち帰されます。うちは期間と再開の目安を聞けたことで、休ませる側の迷いが減りました
- 買う前に、それが何を防ぐものかを確かめてください。困っているときほど、この工程は飛びやすくなります。子どもが痛がっている最中の「試して損はない」は、確かめない理由として、私にはいちばん強力でした。買うなという話ではありません。確かめる工程を、買い物かごより前に置いてください
- 同じ場所が痛くなっても、前と同じだと決めないでください。うちでは、同じ「かかとが痛い」で診断が2回とも違いました。「またあれだろう」と家庭で引き受けずに、あらためて診てもらってください
次にまた、よさそうな道具の話をどこかで聞くことがあると思います。今度は買う前に、それが何を防ぐものかを確かめるつもりです。確かめたうえで、それでも買うことは、たぶんあります。それは、評判で決めるのとは別のことです。
- Wiegerinck JI, Zwiers R, Sierevelt IN, van Weert HCPM, van Dijk CN, Struijs PAA. Treatment of calcaneal apophysitis: wait and see versus orthotic device versus physical therapy: a pragmatic therapeutic randomized clinical trial. Journal of Pediatric Orthopaedics. 2016;36(2):152-157. PubMed
- Williams CM, Krommes K, Paterson KL, Haines T, Caserta A, Thorborg K. Non-surgical treatment for lower limb apophyseal injuries. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2026;7(7):CD015156. DOI
- James AM, Williams CM, Haines TP. Effectiveness of interventions in reducing pain and maintaining physical activity in children and adolescents with calcaneal apophysitis (Sever's disease): a systematic review. Journal of Foot and Ankle Research. 2013;6(1):16. DOI
- Gremillion MJ, Martinez A, Ghanta RB, Borici N, Kushare I. An assessment of the diagnosis, treatment, and outcomes of lower extremity stress fractures in pediatric and adolescent populations. The Physician and Sportsmedicine. 2022;51(6):572-581. DOI
- Belikan P, Färber LC, Abel F, Nowak TE, Drees P, Mattyasovszky SG. Incidence of calcaneal apophysitis (Sever's disease) and return-to-play in adolescent athletes of a German youth soccer academy: a retrospective study of 10 years. Journal of Orthopaedic Surgery and Research. 2022;17(1):83. DOI
本記事は論文に基づく一般的な情報提供であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さんのかかとの痛みが続くとき、繰り返すときは、整形外科などの医療機関にご相談ください。