子どもの一夜漬けを叱る前に——大会前に詰め込んでいたのは、私のほうでした
私は、少年サッカーのチームで、コーチをしていたことがあります。ふだんの練習では、選手の自主性に任せていました。私が決まりごとを作って、やらせることは、あまりしませんでした。
その私が、同じ動きを何度も繰り返させる時期がありました。練習の半分を、コーナーキックのような、止まった状態から始まるプレー——「セットプレー」と呼ばれます——にあてました。だれが蹴って、だれがどこへ走り込むか。配置も順番も決まりごとにして、その形ばかりを確認しました。決まって、大会の2週間くらい前からでした。
そして、実際に点が入りました。大会で、決めておいたパターンから得点できることが、よくあったのです。
自主性に任せるコーチが、大会前だけ正反対のことをやって、それが効いたように見えた。では、「大会前の詰め込み」は、正しいやり方だったのでしょうか。あとになって論文で調べて、分かったことを先に3つ書きます。
①直前に詰めて、変わったものと、変わらなかったものがありました。
②「まとめてやるのが悪い」とは言えませんでした。研究の言う「間をあける」と、私の言う「間をあける」が、別のものだったからです。
③分かれ目は、「決めておけるかどうか」かもしれません。
順に書きます。
点が入ったのは、決めておけるプレーのほうでした
変わったのは、決めておいたパターンです。決めたとおりの形から、点が入ることがよくありました。一方で、変わらなかったものもあります。足もとの技術やボールコントロールは、急にはうまくならないのです。同じ2週間の詰め込みで、結果がはっきり割れました。
なぜパターンだけが形になったのか。説明は3つ思いつきます。言葉で渡せるものだったから。前もって決めておけるものだったから。それとも、種類の違いではなく、足もとには2週間ではただ足りなかっただけなのか。うちの観察だけでは、どれとも決められません。1つ言えるのは、止まった状態から始まるプレーは、試合の中で、相手に合わせて変える量がいちばん少ないプレーだ、ということです。詰め込みが効いたように見えた場所は、相手の出方にいちばん左右されない場所でした。
ここまで書いて、思い当たることがありました。娘は、夏休みの宿題を、はじめの1週間でほとんど終わらせます。息子は、最後の3日でほとんどやります。息子のやり方を心配していましたが、大会前に詰め込んでいたのは、私のほうでした。
「間をあける」の研究は、私の「まとめてやる」を測っていませんでした
「最後にまとめてやるより、間をあけて少しずつやるほうが、あとに残る」。勉強の世界でよく聞く話です。一夜漬けの評判が悪いのも、このためです。練習でも同じなら、私の大会前のやり方は分が悪かったことになります。それを確かめるつもりで、論文を読みはじめました。
ここから、海外の研究が続きます。競技も国も違います。それでも見に行くのは、「決めておけるプレーと、その場で決まるプレーで、練習のしかたを変えるべきか」を実際に確かめた記録が、うちの周りには無いからです。
読んでいる途中で、おかしいと気づきました。「間をあけた練習と、まとめた練習」を比べた研究は、たくさんあります。ところが、その多くが測っていたのは、1本やって次の1本まで何秒あけるか——秒の話でした。私が言っている「まとめてやる」は、練習を大会前の2週間に寄せるかどうか——日や週の話です。同じ「間をあける」という言葉で、研究と私は、別のものを指していたのです。
では、年齢の近い子どもではどうか。見つかる研究は秒の単位のもので、しかも結果がそろっていません。テニスを始めたばかりの8歳ごろの子どもたちでは、1本ごとの間をあけてもあけなくても、上達に違いはありませんでした[2]。9歳ごろの子どもがボタンを順番に押す課題では、むしろ間を詰めてまとめて練習したほうが、翌日によく残っていました[3]。なら、まとめてやるほうが得なのか——そう読みたくなりますし、私もそう読みかけました。ただ、これも秒の話で、私の言う「2週間にまとめる」には持ち込めません。日や週をまたいで分けたほうがあとまで残った、という研究はあるにはありますが、それは大人が手術用の器具の操作を練習した話で、子どもでもスポーツでもありません[4]。そして、秒の話と日や週の話を同じ「間をあける」でくくってはいけない——多くの研究をまとめて整理した論文が、そう釘を刺していました[5]。
つまり、「まとめてやるのが悪い」とは言えませんでした。かといって、「まとめてやっても大丈夫」と分かったのでもありません。私が知りたかった比較——大会前の2週間にまとめるのと、ふだんから分けておくのとで、子どものスポーツの技能があとにどれだけ残るか——そのものを確かめた研究が、見つからなかったのです。
ただ、手ぶらでは帰りませんでした。「決めておけるプレー」と「その場で決まるプレー」の区別のほうは、年齢の合った子どもで実際に確かめた研究があったのです。
決めておけるプレーと、その場で決まるプレーは、子どもでも別のものとして扱われていました
バスケットボールをやったことのない小学生の男子72人(平均11.3歳)を、頭の中での思い浮かべ方で2つのグループに分けて練習させた研究(イラン・2026年)。止まって打つシュート(フリースロー)と、動きの中で打つシュート(ジャンプシュート)の両方を練習し、1週間後に、身について残っているかを測った
Moradi J, Ghorbi M, Samadi H. Differential effects of motor imagery perspectives on open and closed basketball skill learning in children. Acta Psychologica. 2026;263:106383.[1]
競技はバスケットボールで、場所も海外です。それでもこの研究がうちの話になるのは、フリースローとジャンプシュートの違いが、私が見ていた「決めておけるプレー」と「その場で決まるプレー」の違いと、同じ形をしているからです。
この研究が比べたのは、練習の量でも、間のあけ方でもありません。頭の中でどう思い浮かべるか、です。子どもたちを2つのグループに分け、一方は自分の目から見た景色を、もう一方は外から見た自分の姿を思い浮かべてから打ちました。グループの違いはそれだけで、どちらもフリースローとジャンプシュートの両方を練習しました[1]。フリースローは、止まった状態から、毎回同じ距離で打ちます——決めておけるプレーです。ジャンプシュートは、動きの中で、そのつど違う体勢から打ちます——いつどこで打つかは、その場で決まります。
結果はこうでした。練習しているあいだの伸びには、2つのグループで違いがありませんでした。差が出たのは、練習を終えて1週間おいたあと、残っているかを測るテストのほうです。しかも、フリースローで良かったのは自分の目から見て思い浮かべたグループ、ジャンプシュートで良かったのは外から見た自分を思い浮かべたグループ——効いた思い浮かべ方が、2つの技能で逆だったのです[1]。
「では、うちの子にはどちらで思い浮かべさせればいいのか」と読みたくなると思います。私も最初はそう読みました。でも、どちらが正解か、という話ではありません。2つのシュートは、毎回同じ場面を再現する技能と、毎回違う場面に合わせる技能——やっている仕事が違います。仕事が別なら、効く教え方が別でも不思議はありません。言えるのはここまでです。決めておけるプレーと、その場で決まるプレーは、子どもの練習でも、別のものとして扱われていた。そして、「決めておけるプレーのほうが早く身につく」とも言えません。練習中の伸びには、差がなかったからです。
この記事で言えないこと
- 「大会前にセットプレーを練習すれば点が入る」とは、受け取らないでください。点が入ったのがパターンのおかげかどうか、確かめたわけではありません。点は、相手や組み合わせでも入ります。子どもから高校生までの年代で、決めておいた手順のプレーを短期間練習して実際の試合の結果が変わった、という報告は、2つの文献データベースで探しても見つかりませんでした[6][7]
- 「2週間では足もとは変わらない」を、お子さんの目安にはしないでください。8〜14歳の子どもで、2週間以下の練習で足もとの技術が良くなったという報告は見つかりませんでした(見つかった練習期間の最短は4.5週と6週で、6週のほうは差が出ていません)。かといって、「何週間あれば変わる」という目安を示した研究も見つかりませんでした。うちの2週間は、うちの観察にとどまります
- 「間をあけたほうがよい」も「まとめてやるのが悪い」も、お子さんの練習の組み方の根拠にはしないでください。この記事の単位(日・週)で確かめた研究が無いからです。年齢の合った研究は秒の単位を測っていて、日や週の単位で調べた研究は、大人の、スポーツではない課題でした
- 私の「効いた」を、測って確かめた結果のように読まないでください。1つのチームの、私ひとりの見立てで、数えて確かめた話ではありません
- 「戦術の練習なら短期間で効く」と、広げて受け取らないでください。私の実例は、止まった状態から始まるプレーの1つだけです。流れの中の戦術も同じように渡るのかは、分かりません
- 宿題と練習でやり方が同じに見えるのは、子どもの側の話ではないかもしれません。同じ親が、同じ物差しで両方を見ているだけ、という可能性があります
家庭でできること
この記事から持ち帰ってほしいことは、3つです。3つとも、今日できます。
1. 次の大会の2週間前に、家で何を増やすかを、いま決めておいてください。大会が近づいてから考えると、そのとき目についた「できていないこと」を全部詰め込みたくなります——私がそうでした。まだ大会が遠いうちに、「2週間前になったら、これを足す」を1つ決めておいてください。選ぶなら、配置や順番や手順を前もって決めておけるもの。うちの2週間で形になったのは、そちら側でした。
2. 「今日できた」と「身についた」を、口に出すときに言い分けてください。軸にした研究では、練習しているあいだの伸びと、1週間おいたあとに残っているものが、別々に測られていました。そして、差が出たのは残っているほうでした[1]。練習のあとに「今日はできたね」と言うのは、そのとおりの事実です。ただ、それを「もう身についたね」まで進めない。「今日できたね。残っているかは、来週のお楽しみ」——言い分けるだけなら、今日からできます。
3. ご自身が直前にまとめてやったことを、1つ思い出して、書き出してください。仕事の準備、提出物、大掃除、何でも構いません。私の場合は、大会前の2週間でした。子どもの「最後にまとめてやる」が心配になったとき、その書き出した1つが効きます。詰め込むこと自体は、大人も普通にやっています。詰め込みで変わるものと変わらないものがあることも、この記事で見てきたとおりです。注意の言葉を選ぶ前に、自分の1つを思い出してください。
- Moradi J, Ghorbi M, Samadi H. Differential effects of motor imagery perspectives on open and closed basketball skill learning in children. Acta Psychologica. 2026;263:106383. DOI
- Fuentes-García JP, Pulido S, Morales N, Menayo R. Massed and distributed practice on learning the forehand shot in tennis. International Journal of Sports Science & Coaching. 2022;17(2):318-324. DOI
- Dutra LN, Campos CE, Costa CLA, Ferreira AM, Couto CR, Ugrinowitsch H. Massed practice improves learning of serial motor skills. Quarterly Journal of Experimental Psychology. 2025;79(4):896-904. DOI
- Spruit EN, Band GPH, van der Heijden KB, Hamming JF. The Effects of Spacing, Naps, and Fatigue on the Acquisition and Retention of Laparoscopic Skills. Journal of Surgical Education. 2016;74(3):530-538. DOI
- Verhoeven FM, Newell KM. Unifying practice schedules in the timescales of motor learning and performance. Human Movement Science. 2018;59:153-169. DOI
- Clemente FM, Ramirez-Campillo R, Sarmento H, et al. Effects of Small-Sided Game Interventions on the Technical Execution and Tactical Behaviors of Young and Youth Team Sports Players: A Systematic Review and Meta-Analysis. Frontiers in Psychology. 2021;12:667041. DOI
- Sarmento H, Afonso J, Clemente FM, et al. Unlocking the power of set pieces in men's professional football - a scoping review. International Journal of Sports Medicine. 2025;46(8):537-561. DOI
本記事は論文に基づく一般的な情報提供であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。お子さんについて気になることがあるときは、専門家にご相談ください。